税理士先生に何を求めるか?

コロナ禍で中・高生に人気の職業は「会社員」

第一生命『大人になったらなりたいもの』アンケートでは、将来就きたい職業のランキングを小中高生別、男女別に発表しています。それによると中学生・高校生では男女ともに第1位が「会社員」です。「公務員」も男子では中・高とも第3位、同じく女子も中・高とも第2位という結果でした。少し意外な感じもしますが、子供たちは大人が考える以上に現実的で安定志向のようです。

教師と医師も人気

ランキングのベストテンを見てみると、中学生の男子と女子、高校生の男子と女子のすべてに共通してランクインしている職業が「教師・教員」と「医師」です。

テレビを見ても、熱血教師や救急の現場や難しい手術で人の命を助けるカッコイイ医師が活躍するドラマは昔から人気ですし、特にコロナ禍にあってエッセンシャル・ワーカーとして第一線で頑張る医療従事者に注目が集まっているところもあると思います。

さて、「教師」と「医師」には、共通する点があります。それは両方とも「先生」という敬称が用いられることです。本来「先生」という呼び方には、学問や優れた行いに対する敬意が含まれています。今回の「経理のコラム」は「先生」について考えます。

税理士先生

経理に関係する分野にも「先生」と呼ばれる人がいます。それは、税理士です。経理担当者にとって、顧問税理士対応は重要な業務のひとつで、気を遣う場面も多いのではないでしょうか。「先生」を辞書で引くと、「指導的立場にある人に対する敬称」という意味があります。税理士への先生という呼び方は、これに当たるのでしょう。

いきなり税理士先生の話から入りましたが、一般的に先生と言えば学校の教師です。

「先生」の資格について、「研究」をしない教師は、「先生」ではないと思います。(中略)「研究」ということから離れてしまった人というのは、私は、年が二十幾つであったとしても、もう年寄りだと思います。つまり、前進しようという気持ちがないわけですから。」

と戦前から戦後にかけ50年にも及んで教壇に立ち続け、伝説の国語教師と言われた大村はまは著書『教えるということ』で説いています。この本は教師の間で脈々と読み継がれ、「永遠のバイブル」とも呼ばれている教育書だそうです。

本には4つの講演が収録されていて最も昔の講演は1970年8月ですから半世紀以上前になります。それがいまだに読み継がれているというのですから、時代を超えた教師という職業の本質を突いているのだと言えるでしょう。

大村は「子どもというのは、伸びたくて伸びたくて、一歩でも前進したくてたまらないのだから、子どもからすると研究の喜びと苦しみを知らない教師は子どもとは全然違った世界にいる人になる。だから、どんなに優しい声を出したからといって、違った世界の人ですから子どもの気持ちをつかめるものではない」と断じています。

これは教師と子どもの関係の話ですが、税理士と顧客(顧問先)の間でも同じことが言えるのではないでしょうか。

顧客(顧問先)の中には、今の事業は現状維持で満足という人もいるでしょうが、多くは自らの事業をもっと伸ばしたい、課題を解決したいと望む顧客のはずです。彼らに役に立つアドバイスや指導ができる「先生」であるためには顧客と同じ世界にいなければなりません。

つまり「伸びたい」という顧客とそういう顧客を「伸ばしてあげたい」という税理士がいてこその両者の関係性だと思います。そこで税理士が顧客から選ばれるために顧客と同じ世界にいたければ、研究、勉強し続けなければならないということです。

仕事柄、企業の経理部長や経理担当者とお話をする機会は多いのですが、そこでよく話題に上るのが顧問税理士に対する不満です。

多いのが、「基本的なミスが多い」「上から目線で専門用語ばかり使って、相談しづらい」「税務以外の労務や資金繰りの相談にのってくれない」といったような不満です。最近では「コロナ禍でも何にもしてくれなかった」といった声も聞きました。

こうした不満を持たれる税理士とは、大村の言葉を借りれば、顧客とは違う世界にいる研究を失った税理士かもしれません。

今は、ネットなどで様々な情報が簡単に収集できますが、やはり最後は専門家から発信する信頼できる情報や意見が欲しいところです。いくら「先生、先生」と呼ばれていても顧客からは、「先生と言われるほどの、馬鹿じゃなし」なんて、思われているかもしれません。

税理士先生を取り巻く業界の状況

ちなみに、税理士の数は約7万8千人(令和2年)ですが、平均年齢は60歳以上といわれ、高齢化しています。税理士事務所数は約2万6千で、大部分は職員9人以下の零細事務所。典型が税理士ひとりに職員数名というひとり事務所です。こうしたひとり事務所が、企業の多様な要求に対応するには限界があるということも言われています。

こうした業界の状況下、事務所規模の拡大を図るためのM&Aの動きも本格化しており、職員数100名超の事務所が増加傾向にあります。

税理士サバイバルが本格化しているわけですが、先ほど述べたように経理部長や経理担当者が税理士への不満を感じていて、今の税理士を変えたいと思っていてもなかなかそのようにはいきません。一般的に経理などの間接部門の発言力は会社内であまり強くなく、いざ税理士を変えるとなると、「先代から世話になっている会計事務所だから」とか「税理士を変えても、売上げが増えるわけでも、大幅にコストが減るわけでもなく、変えることで却って手間や手続きが増えたら面倒くさい」とかという経営トップや営業・製造といった直接部門の意見に押され、税理士との顧問契約を解除することはなかなか難しいようです。

生き残る税理士とは

そうはいっても税理士業界の競争が激しいことには変わりはありません。そんな厳しい状況にある税理士業界で彼らが生き残っていくにはどうすればよいでしょう。その答えとして、税理士は自分の得意分野を持つべきだと言われます。例えば相続税などの資産税や法人税に強いこと。また医療分野など特定の業界に特化するといったようにです。

逆に、税理士を選ぶ側は、税理士に何を求めるかで選ぶべきです。節税対策が第一なのか、経営判断に有効な数字の把握を早く、正確にしたいのか、あるいは経理事務の代行業者として使いたいのかなどです。

税理士を変えたいと思ったら、あなたの会社が税理士に求めるものは何かを明確にして、それを得意とする税理士を探すことから始めましょう。

「何でもかんでも、変えたい」というのではなく、「この税理士なら、わが社が求めるこういう要望に応えてくれる」という説明ができれば、社内の合意も得やすいのではないかと思います。

先ほど、「指導的立場にある人に対する敬称」が「先生」と述べましたが、その意味で言うと税理士先生は顧客を指導しなければなりません。ただ、税理士は企業経営者ではありませんから、経営を指導するというよりも、経営者が戦略を練る中で、税務や資金繰りなどお金に関することで顧客が知りたいこと、分からないことをアドバイスすることで、経営者の意思決定をサポートすることが求められるでしょう。

従って、税理士に決算業務や税務申告書の作成だけしか求めないのならば、それに長けた税理士をお願いすれば問題はないわけですが、その税理士を「先生」と呼ぶとなるとふさわしくないのかもしれません。もはや手続きの代行は専門性には当たらないと言えます。

悩んだ時は、専門家に相談

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