スキルとセンス(後編)

経理のセンス

前回は経理のスキルについて取り上げました。

専門的なスキルが要求される経理の業務ですが、現在経理の現場で働いている人たちは高いスキルがあればこの先職業として安泰なのでしょうか。

また、経理にはセンスが必要なのでしょうか。

バブル崩壊以降の長い景気低迷が続く中、経理などの間接部門は縮小、削減される傾向にあります。さらにAIやITの発達で、経理や会計といった分野の仕事は将来的になくなるのではないか、と考える人も増えています。

こうした状況ですから、経理職で求人をする場合は、デジタル化の時代なのでせっかく採用するならば単に作業が早くて正確という人材ではなく、経営分析や経営管理まで任せられる人材を求める傾向が強まることが予想されます。

ここに経理のセンスのカギがあるような気がします。

前回のコラムで紹介した本(楠木建・山口周著『「仕事ができる」とはどういうことか?』宝島社新書)には、一般的にスキルのある人は掃いて捨てるほどいて、それができる人、代わりになる人はいっぱいいる。いわばこのレベルはゼロの状態であり、ここからプラスをつくっていくというのが、その人のセンスに強くかかっている。これが本当に「仕事ができる」ということである、と書かれています。

経理の分野で一人前ということであれば、日常的に発生するお金にまつわる企業活動を経理として正確でスピーディーに処理ができれば合格点で、「これができるということ」=「高いスキルを持っている」ことで間違いありません。しかし「仕事ができる」というレベルに達するには経理のセンスがものを言うというわけです。

それでは、経理担当者に必要なセンスとは何でしょうか。

よく言われるのが「数字に強い」ということです。「数字に強い」とは具体的にはどういうことを指すのか。筆者はこう考えます。

クラシック音楽には、世界的に名指揮者と言われる人がいます。古くはフルトヴェングラー、カラヤン、バーンスタイン等々、日本人の中にも小澤征爾以降、有望な若手が世界に出て活躍しています。そして、よくある疑問が「オーケストラに指揮者って要るの?」「誰が指揮しても同じじゃないの?」というものです。

専門家によると、演奏は、その指揮者が楽譜を読んで、実際に音になったらどのように聞こえるかを頭で想像し、それをどのように表現するか、書かれてある楽器の音色をどう組み合わせるか、そして聴衆の反応まで想像して指揮をするものだそうです。

同じ楽譜でも指揮者によって、頭の中に流れる音楽の聴こえかたが違うはずですから演奏も異なり、聴く側の好みもあって、世の中の評価も分かれるということのようです。

さて、楽譜も数字も記号です。記号を読んで、頭の中で想像するということでは指揮者も経理担当者も変わりません。

「仕事のできる」経理担当者のセンスとは、会計数字を見て、実際にその現場で起こっていることを理解し、問題がありそうならば、その要因や改善点までも想像できることだと思います。これが経理担当者の「数字に強い」というセンスです。

そこには、事の本質を見抜く力(洞察力)や専門以外の幅広い知識、他部署とのコミュニケーション力などが基本にあります。

スキルもセンスも両方大事

前回のコラムで簿記を例にスキルを高める方法はたくさんあると述べましたが、反対に、センスを育てる方法は直接的にはありません。

前出の本では、自分のセンスというものを大事に育て、磨きをかけていくことがキャリア構築の実態ではあるが、問題点は「事後性が高い」ことだと指摘しています。センスというと生得的、先天的なものと思われがちだけれども、実際はおおいに事後的、後天的なものだというのです。努力することでこういう成果や結果がもたらされるという因果関係が事前にはわからないこと。不確実性が高いと、努力の総量よりもその不確実性に人は苦しめられることが事後性の難しいところだと言います。

そこにおいて、結果としてセンスを習得している人は、データを大量に読み込む一種のディープラーニングを行っていると考えられます。ディープラーニングを通じて膨大なパターンがストックされ、個別の状況に応じてそれを適用できるというわけです。

誤解をされては困るのですが、「センス」」より「スキル」が大事だと言っているわけではありません。「スキルとセンス」は「部分と全体」の問題に置き換えることができます。

スキルは必ず個別具体的な部分活動に紐づきますが、スキルにより「部分」の機能を向上させたとしても、「全体」がうまく成立し、機能するとは限りません。うまく機能するには「全体」を大きな枠組みとして捉える「センス」が必要となるのです。

従って、スキルとセンスは両方重要であり、どちらがより重要なのかは、その場の状況によります。その重要性は文脈や立ち位置によって変わるのです。

どの戦略をとるべきか

経理業務をスキルとセンスの問題で捉えると、以下の3通りの戦略が考えられます。

  1. スキルとセンスの両方を自社で育てる
  2. 両方を外部に頼る
  3. センスは社内で賄い、スキルは外部に委託する

理想としては、1.のスキルとセンスを持った社員を育成することですが、これが難しい場合はどうしますか。

さて、弊社の提供する経理業務支援サービスをはじめ、一般に経理代行といわれる業務は主に「スキル」の提供サービスであり、「センス」を求められても、よほどその企業の現場や業界に精通していない限り、即応は難しい面があるように思います。その企業に必要な経理センスを外部に頼ることは的外れと言えるでしょう。

MARKコンサルタンツの「経理業務支援サービス」は、戦略3.の高度なスキルを提供するサービスです。その企業のヒト、モノ、カネの状況しだいですが、思い切って業務の一部を外部に任せることで、社員のスキル向上に費やす時間や費用を減らし、これらの経営資源を社員や幹部のセンス向上のために振り向けてはどうでしょうか。

経理人材で悩んでいる経営者の皆さま、ぜひ、MARKコンサルタンツの「経理業務支援サービス」の導入をご検討ください。

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