多店舗展開と経理業務

コロナ禍での新年度を迎えて

2022年度の第1回目の経理のコラムです。

この原稿を書いている時点(2022年4月初旬)での、コロナウイルス感染状況は感染者数の下げ止まり傾向が見られます。春は花見や入学式などのイベントで人出が多くなることから感染のリバウンドや第7波への懸念がささやかれています。

コロナウイルス感染拡大の抑制策として、緊急事態宣言に準じる「まん延防止等重点措置」が初めて適用されたのが昨年の4月5日でちょうど1年経ったわけですが、その重点措置も先ごろ全国で解除され、ウィズコロナを模索しつつ外食産業や旅行業界にも明るさが見えてきたようです。

4月4日の日本経済新聞の記事によると、居酒屋チェーンの「鳥貴族」では、コロナ禍以前から不採算店舗の整理に取り組んでいたこともあり、直営店の数は今年2月時点で384店舗。2019年1月のピーク時から50店舗減少しているといいます。その鳥貴族の日比谷店がこのたび東京・有楽町に新規オープンするということで、実に2019年7月期以来、3期ぶりの直営店出店となるそうです。また、コロナが落ち着けば、東名阪以外の新規エリアにも出店予定ということです。

まだまだ不安は残りますが、一部ではコロナ禍前の経済活動に戻る兆しが見え始めていると言えるようです。

多店舗展開の留意点

全国展開する大手チェーンだけでなく、中小の事業者の中にも売上げや利益が伸びてくれば、2店舗目、3店舗目の出店を考えておられる方もいらっしゃると思います。

いくら現在の店舗の業績が良くても、ひとつの店舗では限界があります。多店舗展開は、売上げを伸ばし、収益を上げると同時に経営リスクの分散を図るといった点で成長戦略のひとつの選択肢です。

では、多店舗展開を進めるにあたって、どんなところに留意しなければならないでしょうか。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」というサイトがあります。このサイトでは中小企業の抱える経営課題について様々な情報が発信されています。

その中の「ビジネスQ&A」というページに「多店舗展開を図りたいのですが留意点を教えてください」という内容が載っています。そこに上げられた留意点は以下の3項目です。

多店舗展開を図るうえでの留意点

  1. 資金
    資金調達が不十分なまま無理に出店すると、資金繰りが厳しくなるので、自己資金の確保と金融機関からの資金調達の準備を計画的に行うこと
  2. 立地
    自店の商圏調査や、出店予定の地域における競合状況や顧客特性を調査して、慎重に出店場所を選定する必要あり
  3. 人材教育
    店長候補は、販売や管理、人的教育などのノウハウが必要。既存店でのノウハウをできるだけマニュアル化し、教育に活用することがお勧め

多店舗展開における経理の課題

さて、このコラムは「経理のコラム」なので、ここからは多店舗展開と経理業務について考えます。

中小企業で多店舗展開する業種といえば、小売、外食産業や美容室、介護事業所などが思い浮かびます。

店舗(拠点)が増えると売り上げは増えますが、人件費、家賃、電気量など経費も増えます。当然、経理に関わる業務量も増えますが、だからと言って経理担当者を増員していては非効率ですし、そもそもそれなりのスキルを持った人を簡単には採用できません。

多店舗化に伴い、起こりがちな問題に次のようなものがあります。

  • 現金の動きの記録が正確になされていない

掛け売りなどがなく現金売上だけの場合でも、店舗(拠点)ごとで支払いが発生する場合に売上金の中から支払うなどをすることで、いつの間にか現金の出入りの内容が分からなくなってしまう。また最近は、現金以外の電子マネー決済も増え、複雑になってきています。

  • 店舗(拠点)ごとに請求書を発送し、後から銀行振り込みで代金を回収したり、あるいは口座振替を利用する場合の、未収金管理があまくなる

口座振替での引き落し不能分が、再請求もされず長期間そのままになっていて、未収金が多額に上っているような例は少なくありません。

課題解決にむけて

経理や総務などの間接部門は本部一括での業務処理ができなくては多店舗化のメリットがありません。

本部一括経理を実現するためには、経理のルールを定め、そのルールの下で管理されなければなりません。

そのためには、売上集計や在庫管理など効率化を図れるツールの導入も検討すべきです。

取りまとめは本部(本店)で行うわけですが、各店舗や拠点の長の管理の仕事を厳格に行わせるためには、基礎的な経理処理の知識や業務処理の仕方を習得させることも、上記の多店舗展開の留意点としてあげた人材教育のひとつです。

未来を見据えた管理会計へ

この体制が整った先には、管理会計があります。

企業活動として行われる一連の取引の実績を数値化し、貸借対照表や損益計算書などの決算書としてまとめるのが「財務会計」です。

これに対し、経営者が会社をどう具体的に経営していくか、経営計画や予算を策定する際に、意思決定の判断材料を提供するのが管理会計です。

財務会計が取引の結果を集計することから「過去会計」と呼ばれるのに対して、管理会計は「未来会計」とも言われます。つまり未来の経営目標を実現するために、今何をやるべきか、を考えるのが管理会計です。

多店舗化の管理会計では、店舗(拠点)ごとの収益管理をしなければなりません。言葉を換えれば部門別の採算管理です。そのためには店舗ごと(拠点ごと)の収益状況の分析は欠かせません。

ただ、実際にこれを行おうとすると、例えば、ある店舗の売上げを他の店舗の売上げとして計上すべき社内取引の問題や、間接部門の経費(コスト)を店舗間でどう配賦するかといった問題、またある店舗の人が他の店舗の応援に行った場合の経費はどう計算したらよいのか等々、いろいろと頭を悩ます問題がでてきます。この段階となると、経営者だけの判断では不安な面もでてきます。

専門家に任せてみる

これらの課題を解決する方法のひとつは「経理は専門家に任せる」ことです。特に、経理処理に自分の時間の多くを取られている社長は、経理のプロに任せることで新規取引先の開拓や現場の管理業務に充てる時間といった前向きな時間を捻出できるはずです。

また、現時点で既に経理が全壊とまではいかなくても半壊のような状態になっているとしたら、いつまでも放っておいても事態は悪くなるだけです。早急に手を打ちましょう。

まず、専門家に何をやって欲しいのか、何がやれるのかを相談し、具体的に、どれほどの正確性と効率化が図れるか、見積もりをとって検討されることをお勧めします。

悩める経営者の皆さまへ、ぜひ、MARKコンサルタンツの「経理業務支援サービス」の導入をご検討ください。

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